オーストラリア・タスマニアの海には、まるで「手」を使って歩いているように見える不思議な魚が生息しています。

海外ニュース

その名はレッドハンドフィッシュ(Red Handfish/学名:Thymichthys politus)。

最大の特徴は、人間の手のようにも見える大きな胸びれ。一般的な魚のように泳ぎ回るのではなく、このヒレを使って海底をゆっくりと「歩く」ように移動します。

海底を歩くレッドハンドフィッシュ

Photo: Rick Stuart-Smith / Reef Life Survey / CC BY 3.0
出典:Wikimedia Commons

レッドハンドフィッシュは、オーストラリア南部のタスマニア周辺に生息するハンドフィッシュの仲間です。

オーストラリア政府によると、浮力を調節する「浮き袋」を持たず、変形したヒレを使って海底を歩くように移動します。

体長は一般的に10cm未満と小さく、赤やオレンジ色を中心に、個体によって色や模様にも違いがあります。

現在確認されている生息地は、タスマニア南東部のごく限られた場所です。

野生では約200匹と推定

かわいらしくも不思議な姿をしたレッドハンドフィッシュですが、現在は絶滅の危機にあります。

2026年にタスマニア州政府が公開した資料では、成魚の総個体数は約200匹と推定されています。

オーストラリア連邦政府でも「Critically Endangered(近絶滅種)」に指定されており、生息域の狭さや海洋環境の変化などが大きな脅威となっています。

「歩く魚」だけど泳ぐこともできる

「歩く魚」として知られていますが、まったく泳げないわけではありません。

普段は胸びれを使って海底を移動しますが、危険を感じたときなどには短い距離を泳ぐこともあります。

主な餌は小型の甲殻類やゴカイなど。

一度に30~60個ほどの卵を産み、メスが卵のそばに留まって守るという特徴もあります。

絶滅を防ぐための繁殖活動も

現在、タスマニア大学のInstitute for Marine and Antarctic Studies(IMAS)などによって、レッドハンドフィッシュを絶滅から守るための保全活動が進められています。

2025年には、飼育下で育てられた65匹のレッドハンドフィッシュがタスマニアの海へ放流されました。

さらに野生個体を繁殖プログラムに加え、遺伝的多様性を確保しながら個体数の回復を目指す取り組みも続けられています。

人間の「手」のようなヒレを使い、小さな体で海底を歩くレッドハンドフィッシュ。

一度見たら忘れられないこの珍しい魚が、これからもタスマニアの海を歩き続けられるよう、保全活動の成果が期待されています。

画像出典

Photo: Rick Stuart-Smith / Reef Life Survey / CC BY 3.0
出典:Wikimedia Commons

参考資料

  • Australian Government — Department of Climate Change, Energy, the Environment and Water
  • Tasmanian Government — Department of Natural Resources and Environment Tasmania
  • Fishes of Australia — Red Handfish(Thymichthys politus)

タイトルとURLをコピーしました